ただ夢の中だけ

Feel Like Shit...!!

『悪人』

『悪人』

2010年に公開された、李相日監督による日本映画。

f:id:kitayoshio:20140131031913j:plain

主演は妻夫木聡深津絵里で、他にも満島ひかり岡田将生といった人気若手役者から柄本明樹木希林といった大御所まで出演しており豪華なキャストが組まれている。

あらすじとしては、寡黙で周囲に心を閉ざしている土木作業員の青年"祐一"(妻夫木聡)は出会い系サイトで出会った保険外交員"佳乃"を激しく揉めた際、怒りにまかせて絞殺してしまう。しばらく、そのことに対して自分を肯定していた祐一であったが、出会い系サイトで知り合った別の女"光代"(深津絵里)との交際を通じて、自らの罪の重さを自覚していく...といった感じでしょうか。

 

個人的にあまり好きではない映画であった。もちろん、数々の映画賞を受賞していたり、キネ旬ベスト10に選出されたりしている映画なのでそれなりに面白いのだろうが、私は観終わった後、非常に気分が悪くなった。

この映画は、"結局、誰が悪人なんだろう?人を殺した犯人だけが悪人って、それでいいの?"という監督からの問いかけがメインテーマなのだろう。確かに、ニュースで「○○が出会い系で知り合った若い女性××を殺害して山中に遺棄した」と聞いてその○○が実は心優しい純朴な青年で両親からの愛情をうけずに育っただとか、殺された女性はひどい性悪で殺される直前も青年に罵声を浴びせ、レイプされたって被害届だしてやるー!と脅迫していたなんてことまで想像しない。しかし、だから何だ?

「殺人犯は悪人」単純であるが、その通りであろう。祐一が普段いくら純朴だろうが殺人を犯したときは間違いなく"悪人"である。そもそも、人間なんて善と悪の両方を持ち合わせているのだから殺人犯にも"善"の部分があっても当たり前。だけど、ニュースを聞いただけの私たちはその"善"の部分について知りようがないし、知る必要も別にないように思う。どんな人間の行為であろうと人殺しは"悪"である。

しかし、この映画は、殺人を肯定しているとまでは言わないが、人を殺してもしょうがないよね、殺されて当然なやつもいるよねと問いかけているように感じた。まず、登場人物の演出方法がよろしくない。犯人側を"実はいい奴"として一貫して描いている一方で、被害者を徹底的に"クソビッチ"としており、観る側の印象をムリヤリ方向づけているのだ。そっか、殺した側にも色々あるんだね.....じゃあ犯人の親族・恋人も含めて優しく接してあげよう.....なんて、そんな甘い認識でいいのか、殺人は。