ただ夢の中だけ

Feel Like Shit...!!

『イントゥ・ザ・ワイルド』

イントゥ・ザ・ワイルド

2007年のアメリカ映画。監督・脚本はショーン・ペン。主演はエミール・ハーシュ

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どこか『グッド・ウィル・ハンティング』を思い起こさせるストーリーだった。心に傷を負った青年が放浪の旅で出会った人々との触れ合いの中で少しずつ心を開いていく。ただ、この映画は実話を元に制作されており、"バッドエンド"で幕を閉じる。

十代、二十代前半の心というのは非常にナイーブだ。これまで気づかなかった、気づいていたが目を逸らし続けていた現実に否応なくぶつかり押しつぶされそうになる。そういった時、若者は決まって迫ってくる現実から逃げようとする。それが、この映画の主人公のように旅に出ることであったり、または家に引き籠ることで現れるのだろう。しかし、結局のところそれらは単なる時間稼ぎにしか過ぎず、いつかは現実に正面からぶち当たって折り合いをつけなければならない。

主人公のクリスは、世界の真理、本当の幸せは何かを見つけるために旅に出たのか?きっとそれは自分自身を納得させるための口実で、本当は受け入れがたい現実から逃げたかっただけなのではないだろうか。

当てもなく逃げ続ける先々で彼は多くの印象的な人々に出会う。そして、閉ざされていた彼の心は動揺する。人間を嫌悪していたはずなのに人恋しくなっていくのだ。だが、ストイックな彼は、そんな自分自身を許すことができない。だから逃げるように更に人のいない場所へと移動していく。そうして辿り着いたのがアラスカであった。

ここでもまた彼は自分一人だけでは生きていくことさえできないことを知る。衰弱していく中で、旅の中で出会った人々、そして家族のことを思い出す。

「僕がもし戻ったならみんな笑顔で迎えてくれるだろうか?」

アラスカの地でようやく彼は、自分を深く傷つけた両親を、そして周囲の人間を受け入れる自分自身を許すことができたのだ。

しかし、先述したように彼の物語は"バッドエンド"で終わる。

"バッドエンド"というのは観客側の僕らからの視点で、クリスにとっては必ずしも"バッドエンド"ではなかったかもしれないが...。

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余談ではあるが、トレイシー役のクリステン・スチュワートが非常に可愛かった。映画公開時は16,7歳くらいであっただろうか。今のようなケバケバした化粧ではなく、すっぴんに近いメイクの方がよっぽど可愛い。

エディ・ヴェダー書き下ろした曲も映画の雰囲気に合っており、いい味を出していたように思う。

二時間を越えるスローテンポな映画であるが、退屈に感じることもなく、自然に引き込まれ心地よく観れた。繰り返し観たくなる良作であることは間違いないだろう。